人の心に寄り添うお店

白川郷バスターミナルを降り、北方向に歩く。白山ホワイトロード入口のすぐ横に大きく立派な瓦屋根の建物が姿をあらわす。昭和32年から続く民宿と今年5月にオープンしたレストランを経営する古志山だ。客層は海外からのお客さんが8割で、冬の繁忙期には1日約10名のお客さんが民宿を利用する。

お店はオーナーの腰山恵一さんと、女将の美代子さんが切り盛りしている。

合掌造りの温もりとはまた違い、白川郷の中にある別の世界に来たような特別感を覚える外観である。まるで千と千尋の神隠しの温泉街にある宿が投影されているようだ。 どんと構える古志山の門口には趣のある提灯が飾られ、大きな石段を一段登るごとに中に入ったらどんな世界が広がっているのかワクワクさせられる。

 

 

レストランの扉を開け、中に入るとテーブルや椅子はもちろん、箸入れやメニュー立ても木で作られている。テーブルは一枚板を使用し、ケヤキの木を使用した長く太い柱は天井まで突き抜けており広々とした空間は恵一さんのこだわりが表れている。 木をふんだんに使った日本らしい古民家風のお店は決して古いという印象ではなく、どこか懐かしく木の香りはアットホームな印象を与えてくれる。

 

「何十年経っても変わることなく、お客様の記憶に残る不易なものにしたい」

オーナーの腰山恵一さんはそう語る。 古志山は恵一さんが自ら、大工さんとともに作り上げた労作である。今でも毎日外では汗水垂らしながら製作に打ち込む恵一さんの姿が見られる。その姿からは表には出さないが伝統のある古志山を守りたい思いがひしひしと伝わってくる。普段お客さんと関わることは少ないが、古志山自体が恵一さんとお客さんを繋いでくれている。

実家に帰ってきたような居心地のいい古志山の空間は一度訪れたらまたいつか訪れたいと思わせるほど魅力的なのである。

古志山の女将 腰山美代子さんが作るごはんは食べたひとの胃袋をがっつり掴み、離さない。どこかで美代子さんの作ってくれたご飯と同じ食材を見つけると、あの味を思い出す。 美代子さんの作る料理の味付けは全て目分量。その目分量がこれまた絶妙であり、ホンモノの味がする。一口食べるたびに、思わず『美味しい』という言葉がこぼれてしまうし、丁寧に作られていることが伝わるからこそ一品一品噛み締めて食べてしまう。

 

美代子さんに古志山がどんな風にお客様の記憶に残ってほしいかと聞くと

「外人のお客さんであれば、日本で食べたあれが美味しかったよねとか、自分の国に帰った時、日本で食べた古志山の料理が恋しいというふうに思い出してくれたら嬉しい。」

と教えてくれた。

美代子さんにとって料理は人を繋ぐツールであり、実際に海外からのお客様がフェイスブックに古志山について掲載したものを見て、訪れる観光客の方もいらっしゃる。また、一度訪れてくれたお客様の友達が訪れてくれたりと、お客様同士の繋がりでお店に来てくれるお客様も多いという。

 

どんな人と働きたいか。

「仕事を一生懸命してくれればいい。男の子でも女の子でも誰でもいい。障害を持っている子でも一生懸命働いてくれたらそれでいい。」

この言葉には美代子さんのみんな同じ生きている人だと、誰でも受け入れてくれる寛容な心と人柄が表れている。

以前ふるさとワーキングホリデー(都市に暮らす若い人たちが、一定の期間、地域に滞在し、働きながら地域の人たちとの交流の場や学びの場などを通して、通常の旅行では味わえない地方を末期と体感してもらいたい、地域との関わりを深めてもらおうというもの)を通して古志山で働いていたかほさんに美代子さんの魅力について聞いた。

「美代子さんの前では、ありのままの自分で安心して毎日を過ごすことができました。 言うべきことはしっかり伝えて、その上で自由にさせてくれるので、私はいつも安心して私らしく過ごすことができたと思います。 お休みの日にはオススメの観光場所やお店をたくさん教えてくれました。その上で、「かほちゃんのペースで観光して、かほちゃんが満足できたならそれが一番だよ。」と言ってくれたことはとても嬉しかったです。自分らしさを尊重してもらいました。」

かほさんの言うように美代子さんは、どんな人でもその人らしさを尊重してくれる。美味しいご飯を食べさせてくれる上に人生相談、くだらない話まで聞いてくれて気づいたら家族のように親しくなっている。

 

そんな美代子さんには一緒に働いてくれる人にひとつだけお願いがある。

「来てくれた人にはなにか残していってほしい。ここにまた帰ってきたときにそれがあったら嬉しいと思うから。」

 

全て手作りのメニューとインフォメーションマップのどちらもふるさとワーキングホリデーで古志山で働いていた学生が残していったものである。細かいところまでこだわって作られた2つには古志山に対する感謝の思いが表れている。

美代子さんは白川村に帰ってくる場所を用意して待っていてくれる。きっと「入りな〜」と言って美味しいご飯も用意してくれるだろう。美代子さんはもちろん白川村の地域の方々もあたたかく迎え入れてくれるに違いない。

 

 「古志山」

【問い合わせ】

TEL 05769−6−1051

FAX 05769-6−1680

【営業時間】

レストラン:11:30 〜15:00

夜予約制

【所在地】岐阜県大野郡白川村鳩谷49−1

 

 


 

この記事を書いた人

河野 日向子

山形県山形市出身の19歳。駒澤大学2年生。
夏も冬もライブに駆け回っています。
今年はフェスに行かず、白川村でした。

インターン事業所 一般社団法人ホワイエ
滞在先 やまごや以上ほしぞら未満