【後編】世界遺産について学ぶことは、その地域のまちづくりについて考えるところから始まる。

 

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【前編】大学で学ぶことの価値なんて誰にも分からない。それならまずは、自分の学びを人のために役立てられる環境へ飛び込んでみては?

2019年6月7日

人との出会いや関係性を紡ぎながら、自分たちの手でオリジナルの学びの場を生み出していくのが、黒田ゼミ。

前盛
これまで黒田先生が白川で実践してきたプロジェクトは、「人」がフックになって生まれているものが多いですよね。

アート活動をしている研究員さんと一緒に「ゴブリンプロジェクト in 白川郷」を開催したり、

芸術系の先生に声をかけて、白川村の合掌家屋の材料として使われている茅を活かしたほうき作りのワークショップを開催したり、

この夏には空間芸術をしている学生さんと、合掌家屋を活用したアーティストインレジデンスの企画を進めていたり。

黒田先生
確かに、大学で出会った面白そうな学生に声をかけて始めたプロジェクトが多いですね。「これは世界遺産と相性良さそう!楽しそう!」と思ったものは、どんどんやっちゃうの。大好きな白川村に、いろんな人を連れていきたい!という思いもあって。

でも誰かが喜んでくれればいいなって思いで何でもやっちゃって、とっ散らかるのは反省してます。もっと一貫性が必要かなとか、分かりやすく結果に繋がる内容にしなきゃいけないかな、とか。

前盛

分かりやすい打ち上げ花火を1発あげることは誰でもできるけど、それを何十年も継続するのはとても難しいことだと感じるので、時間をかけて色々な挑戦を続けている黒田先生の姿勢はすごいなと思います。

地域の方や学生さんとの関係性を見ていても、黒田先生が長い時間をかけて積み重ねてきた信頼の重みを感じます。

黒田先生

私は、地域に入っていく時の1番最初の関わり方についても、とても大切だなと思っているんです。

私が白川村に関わり始めたのも学生時代だったんですけど、その時はまだ何も分かっていない、教えてもらう側の立場だったからこそ、すごく柔らかく地域の方に受け入れてもらえて、色々なことを教えて頂けて。

そのフラットな関係性が今でも続いているからこそ、こうして色々な活動をさせてもらえているんです。

他のフィールド地域では、私が社会人になってから関わり始めたこともあって、なかなか懐に飛び込むような学び方は難しいなと感じていて。

だからこそ学生たちには、今の貴重な立場やタイミングを活かして、どんどん地域に足を運んでほしいなと思っています。

世界遺産というのは、「まちづくり」の手段の1つ。

前盛
黒田先生の研究室では、対外的に謳っている「世界遺産」や「景観」というキーワードに加えて、「まちづくり」という言葉も内包されているように感じます。それらの分野を横断的に学ぶ意味は、なんですか?
黒田先生

私は今たまたま世界遺産専攻にいて、文化財や世界遺産という視点から色々な研究をさせてもらっているけど、本来 世界遺産というのはまちづくりの道具の1つだと思ってるんです。

地域を良くする手段の1つとして、文化財や世界遺産をどう活かすか、どう残すか、という議論ができたらいいなと思うし、文化財などのアイテムを使わずに地域づくりができるなら、それはそれでとても素敵だなと思っていて。

古いものを守ることが正義だとか、世界遺産を変わらぬ形で残し続けることだけが正解だとは全く思っていなくて、ただせっかく長い間残されてきた大切な宝が地域にあるのなら、より良く活かして、その地域の未来が幸せな方向に向かうお手伝いをできたらいいなと思っているんです。

前盛
そういった視点は、座学で学ぶだけでは得づらいものかもしれないですね。
黒田先生

そうなんです。地域に入ってみて初めて、「形を変えずに残すことだけが全てじゃないんだ」と実感を伴って分かるようになるし、地域の人と関わって、リアルな現場に落とし込んで考えてみることで、初めて見えるものがあると感じています。

だから、世界遺産について考えることは、まずきちんとその土地について学んで、地域の人と同じ目線になって未来を考えるところから、始まるんですよね。

そう思うと、まちづくりというのは、世界遺産専攻の全ての分野と、切っても切り離せないテーマだと思うんです。

前盛
なるほど。黒田先生が現場での活動を大切にされている意味が、良く分かりました。

今のお話を踏まえて、先生の研究室は世界遺産や文化遺産に興味のある方だけでなく、まちづくり地域コミュニティなどに興味がある学生さんにとっても、魅力ある学びの場であるように感じます。

「地域づくり」という、長い時間がかかる上に仕事として取り組むにはイメージがしづらい活動を、きちんと学問として、学びとして取り組める環境があるというのは、素敵なことですね。

黒田先生
そういう風に捉えてもらえて嬉しいです。
前盛
私、以前から黒田先生に聞いてみたいと思っていたことがあるんですけど・・・

大学での学びって、なんなんでしょう?

私は、高いお金を払って過ごす4年間が、本当に自分の人生において必要なのか、それだけの価値があるものなのか、ずっと疑問に思っていて。

学びの結果って、とても見えづらいものなので、先生がどう思っているのか伺いたいです。

黒田先生
うーん、大学での学び。ほんと、なんなんでしょうね。難しいね。

社会に出てみると、肩書きも仕事も何にも持ってなかったあの空っぽな時代が、良かったなって思えるようになるのかもしれないけれど。

今の学生さんはみんな真面目だから、在学中から「この学びになんの意味があるんだろう」って葛藤してるよね。

ヒト大学のインターンで白川村に来ている学生さんたちと話したときも、やりたいことが分からないとか、自分の進むべき道はどこなのかとか、真剣に悩んでいて、私まで考えさせられちゃった。

前盛
黒田先生は、そんな学生さんにどんなアドバイスをしているんですか?
黒田先生

私は立場柄、大学院の受験希望者の相談に乗ることが多いんだけど、そこでよく伝えるのは、「地域において若者1人の存在ってすごく大きいんだよ」ってことかな。

都会で生活して、日々同じような年齢層の人の集団に属していると、気づかないことなのかもしれないけど、地域では1人の若者の力が大きなパワーになるし、みんなに必要としてもらえる。

自分が普段当たり前だと思ってやっていることも、地域に入ると他の誰にも真似ができない、みんなから求められるスキルになったりする。

もちろん全員が全員、必ずしも地域と深い関係を築けるわけではないけれど、もしかしたらあなたが、その1人になるのかもしれないよ、ってことを伝えています。

自分の学んできたことや、自分自身の存在が、誰かに喜んでもらえるって経験は、純粋にとても嬉しいことだと思うから。

前盛
確かに。一般的な進学・就職ルートに疑問を抱く若者が増えてきている理由も、学ぶ楽しさとか、働く喜びを、生活の中でリアルに実感できないことが影響しているのかもしれませんね。

黒田先生にとっては、仕事の喜びや、学ぶ楽しさって、どんなことですか?

黒田先生

うーん。この間、私の研究について知人に話したときに「それは、どういう業績に繋がるの?」と聞かれたことがあったんだけど、そのときに「ああ私は業績のために研究してるんじゃないんだな」って思ったの。

1人でも誰か喜んでくれればいいな、とか、関わってくれている色んな人たちの人生が、ちょっとでも幸せになるような活動であればいいな、って思ってこの仕事をしているなと思って。

単純すぎるかもしれないけど、自分の仕事や学びが 目の前の人の役に立つという経験こそが、1番の原動力になる気がしています。

でもそれだけでは、わざわざ大学で学ぶ意味・教える意味には、ならないのかもしれない。だから、大学での学びの意味や価値については、私も今だに答えが分かっていないんです。

前盛
東大と京大を卒業している黒田先生でも答えが分からない、というのは、私にとって結構衝撃的な事実でした。同時に、そりゃ学生が悩むのも当然だなって、ちょっと気持ちが楽になった部分もあります。
黒田先生
うん、本当にそうだよ。答えが出ないことに対して、みんなそんなに焦らなくてもいいと思うし、若者はもっと堂々と、自分の楽しいことや、気持ちいいなと思うことに舵取りしてみてもいいんじゃないかなと思ってます。
前盛
そんな自由度の高い黒田研究室では、今後どんな人に入って来てほしいとか、求めている学生像はありますか?
黒田先生

現場力のある人に来てほしいかな。現場を楽しめる人。

あと、人間力のある人。

前盛
人間力とは?
黒田先生

なんだろう。どんな状況も楽しめる力、かな。

お勉強ができるとか、コミュニケーション能力が高いとか、そういう断面的な要素だけではなく、初めて出会う物事に対しても柔軟に受け入れられるとか、人や地域に丁寧に向き合う姿勢があるとか、そういう学生さんに来てもらえると、一緒に色んな楽しいことができそうだなと思っています。

特に今年度からは、学生が数ヶ月単位で地域に滞在して、現場での学びをそのまま単位に換算できるような長期のインターンシッププログラムも予定しているので、ぜひ熱意の高い学生さんに入ってきてもらえたら嬉しいです。

前盛

多くの人が周りの流れに沿って決める大学進学とは違い、院に進学するというのは大きな決断ですよね。

でも、先生のお話を聞いていたら、なんだか私も黒田ゼミで学んでみたいなと思えてきてしまいました。

もし私と同じように、黒田研究室での学びや白川村での活動に興味を持った方がいれば、ぜひ7月に東京で開催される黒田ゼミのイベントにも、気軽に遊びに来て欲しいです。

前盛
黒田先生、今日は貴重なお時間、ありがとうございました!
黒田先生
こちらこそ、ありがとうございました!

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