“家族”が暮らす場所ーーさくら山荘ーー

さくら山荘

 

暖炉

 

入り口を抜けるとそこには暖炉があった。

通りの左右を提灯の明かりがほのかに照らし、その先では入居者の方々が楽しそうにおしゃべりをしている。

故郷に帰ってきた。そう感じるような穏やかで落ち着ける雰囲気が漂っている。

さくら山荘――白川村民の“家”がここにある。

 

通り

 

さくら山荘は、白川村にある特別養護老人ホームだ。

どういった方々が働かれているのか。従業員のお二人に話を伺った。

 

村民と打ち解ける場所

「100人には100通りの接し方があります」

穏やかな笑みを浮かべながらゆっくりとした口調で話をしてくれたのは、8年前の結婚をきっかけに白川村に移住してきた萩田広美さんだ。

「入居者の方々は個人個人で性格や考え方が違います。それぞれの人に合った接し方をすることで、自宅にいるときのような安心感を抱いてもらいたいと考えています」と萩田さんは語る。

 

「入居者の方との距離の近さが、さくら山荘の特徴の一つです」

さくら山荘の従業員や入居者のほとんどは白川村民で、入居者と従業員の距離が近い。従業員が入居者に敬語を使わないこともある。一見失礼にも感じられるが、これにより入居者と従業員の関係がより深くなるそうだ。互いに親密な関係を築こうとするさくら山荘ならではの取り組みだ。

 

「さくら山荘での仕事を通じて、村民の方々と打ち解けることができました」

8年前に移住してきたばかりのころは、白川村民たちになかなか馴染めなかったと言う萩田さん。さくら山荘で働き始め、入居者や従業員と接することで、白川村民たちと仲を深めていくことができたそうだ。

村外から働きに来る人にとって、さくら山荘は村民との親睦を深める場所としての役割を果たしているのだろう。

 

「看取りをここで行う家族が多い。これも特徴の一つだと思います」

老人ホームでは、入居者の死期を見守る看取りは自宅でするのが通常だ。しかし、さくら山荘では看取りを山荘で行うことができる。親族がさくら山荘にやってきて、入居者の最期を見守る。

さくら山荘が自宅に近しい存在であることの証の一つと言えるだろう。

 

本当の自分が出せる場所

「ここでは本当の自分が出せます」

続いて話をしてくれたのは、埼玉の高校を卒業後、白川郷に移住し、さくら山荘で働き始めた山﨑一蔵さんだ。働き始めて半年しか経っていないとは思えないようなしっかりとした口調で、自身の想いを熱く語ってくれた。

 

自分という人間を思う存分に表現できる場所を探していた高校生のころ、山﨑さんはさくら山荘に出会う。

「豊かな自然に囲まれた白川郷で働けることに魅力を感じました。実際に働いてみると、ゆったりとした雰囲気に、心穏やかな入居者の方々とのおしゃべりなど、この環境が自分の性格にとても合っていると感じました」

自分自身を思い切り出せる“家”を見つけた山﨑さん。さくら山荘に来る際、村外から移住してくることに対する不安などはなかったのだろうか。

「始めはもちろん不安でした。村内の人々が多い職場なので。実際に働いてみると、取り越し苦労だったことがすぐに分かりました」

入居者の方々から毎日のように「若いのに村外から来てくれてありがとう」と言われ、半年という短い期間で村民に溶け込んだ山﨑さん。高齢化が進む白川郷で、この溶け込みの早さが生まれるのも、入居者と従業員の親密な関係を築き上げているさくら山荘だからこそ、と言っても過言ではないだろう。

山﨑さんがさくら山荘に出会ってから半年。学ぶべきことはたくさんあるが、山﨑さんは立派な介護職員を目指して、日々仕事に取り組んでいる。

 

さくら山荘の荘長である竹中健さんにも話を伺った。

 

”家族”が暮らす場所
竹中健 荘長

 

「私は縁の下の力持ちです。仕事の多くは従業員の主体性に任せています」

従業員が自分らしく働ける場所。入居者がゆったりと穏やかに暮らせる場所。

竹中荘長の仕事に対する思いや姿勢が、さくら山荘の穏やかで落ち着ける雰囲気をつくり出していると感じた。

 

「入居者の方々を地元のお祭りに連れていくこともあります」

しばらく会っていなかった村民たちとの交流を楽しむ入居者の姿がそこにはある。入居者のことを家族のように大切に思う竹中荘長。その荘長がいるさくら山荘ならではの取り組みだろう。

「従業員と旅行に出掛けることもあります」

旅行先で従業員と穏やかに話す荘長の姿が目に浮かぶ。従業員にとっての家族のような存在であろうとする荘長。そんな荘長の心の表れだろうか。

 

村民と打ち解ける。本当の自分が出せる。

形はさまざまだが、その人の想いを受け入れてくれる”家”がここにある。

 

私も荘長の“家族”になりたい。

 

この想いもさくら山荘は受け入れてくれるだろうか。

さくら山荘――入り口を抜けた先にあったのは”家族”が暮らす場所だった。

 

 

高齢者福祉施設 瀬音さくら山荘

【問い合わせ】TEL 05769-5-2141 FAX 05769-5-2170

【所在地】岐阜県大野郡白川村長瀬字小保木755-1

※介護スタッフもしくは生活相談員候補スタッフとして働いて頂ける方を募集しています。気になる方はご連絡下さい。

 

この記事を書いた人

五十嵐久人

関西弁が不得手な生粋の関西人。23歳。大阪大学大学院薬学研究科修士1年。

地域に関わる活動に興味があって参加。

一番好きなアニメは、『進撃の巨人』――ではなく、『化物語』。

※本記事は9月3日~8日に白川村で開催された白川郷ヒト大学の「ローカルワーク編集合宿」で製作されました。

 

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