【しまたべ】若手農家インタビューvol.1 新里龍生さん

雨の日も風の日も、たとえ台風の日だったとしても畑に通い、

汗水流しながら作物に愛情を注ぎ続ける。

そんな農家さんがこの島には沢山います。

今回はそんな中から4名の若手農家さんにお話を聞きました。

 

しまたべ(島×食×部)とは・・・お野菜、果物、お肉、お魚・・・私たちの食卓に並ぶ島の味。それらをつくる“人”を知るだけで「食べる」がさらに楽しくなる。しまたべは、そんな美味しいの裏側にいる“人”を知るきっかけを、あなたにお届けするプロジェクトです。

 


vol.1 新里 龍生しんざと たつきさん(新里ファーム)

・1990年10月1日

・石垣市平久保生まれ

・農家歴:7年

・生産作物:パプリカ、キュウリ、大玉トマト、ミニトマト、ゴーヤー、冬瓜など

 

「両親の手伝い」が気がついたらやりがいに。

現在ビニールハウス18棟分に渡って様々な野菜を栽培する新里さん。

 

−−−農業をはじめたきっかけと現在に至るまでのことを教えてください。

 

農業に従事する両親の元に生まれましたが、元々は農家を目指していたわけではありませんでした。

 

石垣島の中学校を卒業後、バスケットボール部の推薦で沖縄県立美来工科高校に進学し、教員免許を取得するために岡山理科大学へ進学しました。大学を卒業してからは沖縄本島で1年間予備校に通い、採用試験にのぞんでいましたが、その1年後に農業をする両親が人手不足ということを聞き、23歳の時に島にUターンしてきたんです。

当時、進路について迷っていたということもあり「地元に帰って、両親の手伝いをしながらこれからのことを考えてみよう。」という気持ちで手伝いを始めたのですが、美味しい野菜を作り出す農業のやりがいに魅力を感じるようになり、農家の道を決意しました。

 

両親は石垣島の北部にある平久保ひらくぼ地域に畑を構えているのですが、25歳の時に僕は独自の土地を磯辺いそべ地域に購入しました。土地を購入してすぐは、両親の畑と自分の畑とを行き来していました。当時はまだビニールハウスが無かったため、施設野菜の栽培は困難で、オクラやカボチャなどの路地栽培で収穫できる野菜からスタートしました。

 

その後ビニールハウスをリースで設置することができ、施設野菜の栽培も可能に。5年経った今では、オクラやカボチャに加え、キュウリ、大玉トマト、ミニトマト、パプリカ、ゴーヤー、冬瓜など多品目に展開しています。

 

切磋琢磨できる親子の関係

−−−一緒に農業をできて、ご両親はきっと嬉しい気持ちでいっぱいですね。

 

両親とは、今は同じ「新里ファーム(新里農園)」の看板のもと、それぞれの土地で農業をしています。昔から休みの日は両親の手伝いをさせてもらっていたおかげで、農業大学など専門的な教育機関で知識を得ていない僕でもなんとなく農業の感覚をつかむことができました。今こうして規模を拡大し続けられているのは親の背中を見てきたからこそですね。

 

離れた場所で畑を構える今でも、切磋琢磨できるいい関係だと思います。農業のノウハウも、両親が試してみて良い農法があれば教えてもらうし、自分が試してみて良いなと思えることがあれば親父のところに行って「こんな効果的な方法があるよ」と教えたりしているんです。

 

土地を購入する時も、両親の畑の近くではなく市街地に近い土地の購入を勧めてくれたのは両親でした。野菜の出荷先は主に市街地になるため配達の手間などの難点を実際に体験している立場での貴重なアドバイスでした。

 

新里ファーム(新里農園)の野菜は黒とゴールドのステッカーが目印

 

 

−−−1年の中で最も忙しい時の1日について教えていただけませんか。

 

まさに今の時期が、野菜の収穫繁忙期です。※インタビューは2月に実施

 

1年間で考えると、野菜の品種にもよりますが、大体9月から植え付けの準備を始めて10月に植え付けを開始します。そこから5月くらいまでは、休みなしで畑に出ます。この島は台風の影響がすごく大きいので、台風が多い夏場は野菜づくりはお休みしているんです。

 

【忙しい日の流れ】

7:30   畑に到着。畑作業開始。

12:00 お昼休憩

13:00  畑作業再開。納品などの外回りも同時進行で行う。

18:00  畑作業は終了。プレハブにて野菜の袋詰めなどの出荷作業。

21:00  全ての作業が終了。

 

本音を言うと、少しでも長く畑で土を触っていたいという思いもありますが、サポートしてくれている奥さんが現在は子育て中ということもあり、僕自身がスーパーや直売所への外回りも担当しています。その代わり、畑作業は週数回の短い時間ですが6名のスタッフを雇用しています。ここまで多くの人を雇用するのは初めての試みなので不安な部分もありますが、みなさん協力的で素敵な地元の方々で、安心して任せることができています。

 

新里さんへの取材中も、スタッフの方がテキパキと収穫作業を進めていました。

 

「美味しいよ」のための、土づくりへのこだわり。

−−−農業をしていてよかったなとやりがいを感じる時や、こだわっていることを教えてください。

 

やりがいを感じる時はやっぱり生の声を聞けた時。JAファーマーズマーケットやえやま「ゆらてぃく市場」(JAおきなわが運営する農産物直売スーパー)は農家自身で野菜を陳列するので、購入してくださる方とコミュニケーションをとることができる場所。島の方々が「新里さんのお野菜美味しいさ〜。」と言って野菜をカゴに入れてくれるのを実際に見て、「ありがとうございます。」と直接伝えることができた時、本当に嬉しく感じます。こうして自分が作る野菜を味わってくれて楽しみにしてくれているみなさんのことを思うと、もっともっと美味しい野菜づくりを追求したいという思いになります。

 

そのために自分がこだわっていることは全ての野菜の始まりとなる「土づくり」。前述のように台風が多い夏場は野菜づくりを控えるのですが、それは土を休ませるという意図もあり、とても大事な時期なんです。同じ野菜を同じ畑で何度も育てると、土の環境が悪くなって「連作障害(同じ科の野菜を同じ圃場で植え続けることで、土壌の成分バランスが崩れたり、その野菜を好む害虫ばかりが集まり土壌中の微生物に偏りが出てしまい、生育不良を引き起こすこと)」が起きてしまいます。それを防ぐために、この島ならではの暑さを利用した太陽熱消毒と、夏はソルゴーというイネ科の植物を植え、有機物として土に混ぜ込むことで土壌環境を維持しているのです。また、石垣島産の完熟堆肥「世美がえり」を多く使わせてもらっています。

 

新里さんのトマトはとても甘くて美味しいと巷でも大人気!

 

 

−−−そんなこだわりをもって取り組んでいる農業の大変なことや今の課題を教えてください。

 

農業の大変な点は、とにかく体力勝負ということかな。ただでさえも暑いこの島で、ビニールハウスという密閉された空間はさらに室温が上がる。その中で力仕事をしないといけないので、体力的なしんどさは正直あります。

 

また、今抱えている課題としては販路の問題があります。今でこそマックスバリュやサンエーなどのスーパーに卸せるようになりましたが、初めの頃は需要と供給のバランスが課題でした。スーパーは野菜の1日の消費量が大体決まっています。出荷できる野菜の量がその消費量を満たしていないと扱ってもらえないし、その量を大きく上回って収穫できても廃棄になるだけ。そのベストな生産量の調整にすごく苦戦していました。

 

その課題をクリアし、現在は島内販売をメインに野菜を届けていますが、次のステップとして島外への出荷という課題が目の前にあります。最近では農家さんも増えてきて、またネット社会で様々な情報を離島に居ながら入手することが容易になったため、農業の技術的にもレベルが上がってきました。このままだと、島内流通だけだと厳しくなり始めるだろうなと考え、少しずつですが島外・県外への出荷にも踏み切れるように動き出しているんです。カボチャやオクラ、ゴーヤなどの傷みにくい野菜からはじめていけたらと考えています。

 

もちろん販路だけでなく、時代とともに食へのニーズや市場は日々変わっていくので、常に農法や戦略を考える頭でいないといけません。新しい技術へのアンテナも張っておく必要があり、四六時中野菜にまつわることを考えています。何かつまづいたりしたことがあったら農協の人に聞いたり、改良普及家の人に聞いたり、島内外の信頼できる農家さんに相談したりと周りの人の力も借りながら、実践と同時進行で勉強も欠かさずやるように心がけています。

 

最近、消費者であるみなさんにとってはもちろんですが、自分にとっても「美味しい」と感じることができる野菜づくりを、いつかは自分の子どもと一緒にできたらいいなと思う時があるんです。そのためには、自分自身が体を壊したり、農業を続けられないような状況にならないために頑張らないといけませんね。

 

星型のキュウリにも挑戦中!お弁当などに入れたら可愛いですよね。

 

 

−−−最後にこの記事の読者の方へ、メッセージをよろしくお願いします!

 

美味しい野菜づくりを心がけて日々頑張っています。これからも、美味しいと味わってもらえるよう精進しますので、これからもよろしくお願いします。また、一人でも多くの方に「新里ファーム」の野菜を目に留めていただけたら嬉しいです。

 

今僕たちが取り組んでいる栽培方法以外にも、農業にはたくさんの方法があります。もし、これを読んでいる方のなかに新たに農業を始めたいという人が居れば、とにかくいろんな農家さんに「生」の声を聞くのをおすすめします。石垣島の農家さんでもいいし、沖縄本島や他の地域などの農家さんでもいいと思います。実際に野菜づくりをしている農家さんを、農協や普及家を通して紹介してもらうのもおすすめです。とにかく、直で話を聞いた方が、有益な情報も現場の声も一気に吸収することができます。思い切ってまずは農家さんの門を叩きに行きましょう。もちろん、僕のところに話を聞きに来たいという場合も大歓迎です。お待ちしています。

 

新里 龍生さん、ありがとうございました!

聞き手・写真 岩倉 千花 / 協力 石垣市農林水産部 農政経済課

 

この記事を書いた人
岩倉 千花 ( Iwakura Chika )
石垣市川平村出身。立命館アジア太平洋大学を卒業後、芸能プロダクションと地域コンサルタントの会社で経験を積んだ後に2017年8月より石垣島に拠点を移す。島内のイベント運営やカメラマン、ライターとして活動中。1991年6月生まれ。
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