「5等級の飛騨牛」にこだわり続けるー飛騨牛食べ処 てんから
「何かを作る仕事がすきやな。石垣を作り上げるのも、肉をさばいて製品にするのも自分の技術やで。自分の手で何かを生み出すという意味で、通じるものがあるなと思う。」
今回お話をうかがったのは、飛騨牛食べ処 てんからの店主・和田幾太郎さんだ。

幾太郎さんは、岐阜県郡上市出身。
趣味は魚釣りで、今でも時間が空くと川釣りに出かけるのだとか。幼い頃から「遊ぶといったら、川しかなかった」という環境で育った幾太郎さん。
前職は石工(いしく)をされていたそうで、結婚を機にご夫婦でてんからを開店。現在に至るという。

白川村で夕飯を食べられる場所を作りたい
てんからの開店は13年前。
店名は、渓流釣りの手法「てんから釣り」に由来する。てんから釣りとは、毛鉤(けばり)という擬似餌を用いた伝統的な釣りの手法のこと。
竿と釣り糸、毛鉤のみのシンプルな仕掛けでリールを用いない手軽な釣り方が特徴で、比較的難易度が高い手法だと言われている。
店内には、てんから釣りで使用する釣り竿や魚の剥製が飾られていて、幾太郎さんの釣りへの思いがとてもよく伝わってくる。

「昔、富山で釣りをした帰りに白川村へ立ち寄ったとき、白川村には夕飯を食べる場所なくて、コンビニの駐車場でカップラーメンを食べていた」
そのコンビニで奥様と出会い、結婚をされたというからそれもまた驚きだ。
白川村では、ほとんどの店が夕方になると店じまいをすることもあり、夕飯を食べられるお店がほとんどない。観光客がコンビニで夕飯を購入しているのは、白川村ではよく見る光景である。
結婚後、幾太郎さんは「白川村で夕飯を食べれる場所」があったら良いなと思い、好きだった石工の仕事を辞めて、白川村で飛騨牛を扱う飲食店「飛騨牛食べ処 てんから」を開店したという。
てんから、13年間の軌跡
「いつも席が足りなくて、毎日外でお客様が待っとったもんで。席数を増やそうと思って、昨年リニューアルオープンをしたんや」と話す幾太郎さん。
リニューアルをしたことにより、席数が20席から40席に増え、以前と比べるとお客さんを待たせることは少なくなったという。
客層にも大きく変化があったようだ。
「13年前は、当時まだ飛騨トンネルを掘っていたもんで、どちらかというと業者の人が多かった。でも高速道路が開通してからは観光客が増えてきたね。
ここ数年ではゲストハウスが多く開業したり、インターネットの口コミが広がったこともあって、こっち(鳩谷地区)のほうにも多くの外国人観光客が来るようになったかな」
世界遺産に登録されている合掌作り集落(荻町地区)からてんからまでは、徒歩15分~20分ほど。観光地からはすこし離れたところにお店を構えているが、飛騨牛を食べようと足を運ぶ観光客が多くいるようだ。
また、幾太郎さんの釣り好きが知られているのか、釣り客も多く来店するのだとか。
「メニューの数は増やさないようにしてるんや。あんまりいっぱいあっても何ともならなくなるで、一個増やしたら一個減らすように意識してる。
当時全国ニュースとなったある焼き肉店での『ユッケ集団食中毒事件』が起きてから、ウチでも生肉のどんぶりを提供できなくなってしまって、それからはローストビーフ丼を提供するようになったんやけど、今ではローストビーフ丼はてんからの人気メニューだね。
個人的には生肉のどんぶりのほうがうまかったと思うけどなあ」
おすすめメニューは、ひつまぶし・ローストビーフ丼・カルビの定食だそう。

こだわりは「5等級の飛騨牛」
幾太郎さんにてんからのこだわりを聞いてみた。
「飛騨牛ですよ。とにかく飛騨牛」と幾太郎さんは即答した。
「最初は枝肉ごとに購入していたけれど、肉の値段の高騰に追いつけなくなり、5等級を1頭買いをするようになったね。
以前は精肉店でさばいてもらっていたけれど、今は肉用の冷蔵庫を買って、毎日夜な夜なさばいて翌日使えるようにしている。
精肉店の仕事を自分でやることで、値段を抑えているかな。お肉の価格が高騰しても、なるべく値上げをせずに頑張りたいね」
てんからで提供しているのは、5等級の飛騨牛だ。幾太郎さんは高山の市場から飛騨牛を仕入れているという。同じ5等級の飛騨牛でも仕入れ先によって味が違うのだとか。
「毎日味見していればわかるようになる。そうしたら、コレステロール値が大分上がった」と幾太郎さんは笑って言う。最初は味の違いがよくわからなかったが、経験を積むうちに、すこしずつ味や質の違いが分かるようになったという。

“5等級の飛騨牛”にこだわっているからこそ、お客さんに喜ばれる飛騨牛を提供できるのではないだろうか。
てんからのこれから。
「英語が話せるようになって、外国人観光客とコミュニケーションをとれるようになるのが僕の理想やな。これがまた難しくて。
ひとりでカウンターに座って食べている外国のお客さんがいて、なんかちょっと話せたら楽しいなあとは思うんやけど、なかなか話しかける勇気が出ない」
幾太郎さんは、外国人観光客との言葉の壁を感じているようだった。以前、村内に住んでいた方を講師としてお招きし、週1回英会話教室を開講してもらっていた時期もあり、外国人観光客の方が話していることをなんとなく理解することはできるようになったそうだが、すぐに返答できるにはまだまだ至ってないという。
多くの外国人観光客が訪れる白川村にお店を構えているからこその悩みなのではないだろうか。
最後に幾太郎さんから一言。
「シーズン中であれば、空いた時間にはスタッフを川に連れていきます。結構喜んでもらえるので、嬉しいですね。これは他の事業所にはない強みといえるんじゃないかな」
てんからでは、一年を通してスタッフを募集している。
都会ではできない川遊びや魚釣りといった、自然があふれる白川村ならではの体験をさせてもらえるので、ぜひ一度てんからでのインターンを検討してみるのはどうだろうか。
白川村民にも、観光客にも、釣り客にも愛されている「てんから」。
白川村を訪れた際は、幾太郎さんこだわりの「5等級の飛騨牛」を食べにてんからへ足を運ぶことをおすすめしたい。
飛騨牛食べ処 てんから 【問い合わせ先】05769-6-1661 【営業時間】11:00~15:00 / 18:00~20:00 【定休日】月曜日夜の部~火曜日 【所在地】岐阜県大野郡白川村鳩谷296-1 ※詳細は公式ホームページをご覧ください |
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渡辺 莉央
武蔵野大学人間科学部社会福祉学科2年。旅先には必ずくまのプーさんのぬいぐるみを連れていきます。
インターン事業所 一般社団法人ホワイエ
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