【しまたべ】若手農家インタビューvol.2 杉原 真実さん

雨の日も風の日も、たとえ台風の日だったとしても畑に通い、

汗水流しながら作物に愛情を注ぎ続ける。

そんな農家さんがこの島には沢山います。

今回はそんな中から4名の若手農家さんにお話を聞きました。

 

しまたべ(島×食×部)とは・・・お野菜、果物、お肉、お魚・・・私たちの食卓に並ぶ島の味。それらをつくる“人”を知るだけで「食べる」がさらに楽しくなる。しまたべは、そんな美味しいの裏側にいる“人”を知るきっかけを、あなたにお届けするプロジェクトです。

 


vol.2 杉原 真実すぎはら まみさん(mammy farm)

・1982年1月25日

・千葉県生まれ

・農家歴:3年

・生産作物:パイン

 

流れるようにたどり着いた石垣島。

「真実」と「母なる大地から生まれた美味しい果物」という意味合いを込めた”mammy farm”

 

−−−まずは、杉原さんと石垣島との出会いについて教えてください。

 

きっかけはマッサージのお仕事でした。

 

もともと、私の人生はいろんなことが順調な人生だったなと思います。仕事も飲食や不動産、雑貨屋さんなどいろんなことにトライして。でも、30歳を迎えようとした時にふと「自分はこのまま甘えた生き方をしていていいのかな」という思いが出てきて、年齢制限ギリギリのタイミングでオーストラリアにワーキングホリデーに行きました。

 

いざそこで生活を始めて、大学でも語学や国際関係について学んでいたはずなのに何もそれを生かせず四苦八苦した自分が居て驚きました。自分がどれだけちっぽけなのかということと、やっぱり自分は周りの環境に甘えていたということを痛感したんです。

 

その経験から、30歳でそれを考えるには遅すぎたかもしれないけど、「自分が本当にしたいことは何?」と自分自身に問うようになったんです。

 

そこで浮かんだのが「癒し」というキーワード。私はオーストラリアでマッサージを学び始めました。特に資格が必要なく医療的な知識はなくても人に施せるマッサージを学んでいたので、帰国後もマッサージの仕事をしました。そうしてマッサージを仕事とした日々を送っている時に「石垣島で海の近くでマッサージ受けれます」という広告をネットで見つけたんです。「えー海の近くでマッサージ受けたい!」と思い、石垣島に来ました。それが石垣島との出会いです(笑)。

 

 

−−−ここまでで一冊本書けちゃいそうです(笑)。マッサージを受けにきたつもりが、気がついたら移住に?

 

当時は、今みたいに格安航空も就航しておらず、東京から石垣島まで往復10万円はかかったんですよね。10万円もかけてマッサージだけ受けて帰ってくるってどえらい話じゃないですか(笑)。その時に職場の環境を変えたいと思っていたこともあって「これは1回自分をリセットすべきタイミングかな」と考えて、仕事の休みを頂いてお試しでちょっとの期間住んでみたんです。受けたいなと思った海の近くでのマッサージも、住んじゃえば一度とは言わず何度でも通えるし、と思って。

 

たまたま寮付きのマッサージの仕事を見つけることができたので、身軽で来島しそこで働きはじめました。ずっと関東で暮らしていた私からしたら石垣島で過ごす日々は最高のリフレッシュ期間でした。

 

ただ、勤め先の出勤時間が昼過ぎからで、いつも午前中の時間が空いていたんですよね。こんな自然豊かな場所に住んでいるのに朝の時間を家にこもっているのってもったいないなと思っていました。そんな時、仲良くなった同い年のセラピストさんの旦那さんが島で農業と畜産をされているというのを聞いて、その友人が畑作業を手伝う時に一緒に行かせてもらうようになったんです。

 

畑ではオクラの選別などを手伝わせてもらって、次第に「土いじりって楽しいな」と感じるようになりました。本来であればまた関東に戻る予定だったんですが、ちょうど東京の仕事の契約満了時期を迎え、このままこの島で自然に近い暮らしをしようと思って、移住と農業への挑戦を決めました。

 

 

−−−全く未経験の農業へはどのようなスタートをきったんですか?

 

これもまたありがたいタイミングなんですが、移住を決めた時にたまたま島の農園がバイトを募集していたんです。求人内容としては畑作業員ではなくて店舗のスタッフだったんですが、営業時間の前後で畑作業の手伝いもさせてもらいました。どこの誰かもわからない私に農業のことや、それにまつわる制度のことなども丁寧に教えてくれたんです。

 

その時に、石垣市の認定新規就農者の計画認定制度を使えば農業立ち上げ時の費用などのサポートを受けれると言うことを知りました。対象年齢のリミットが迫っていたこともあり、すぐにでも始めようと思ったんですが「まず、土地はどこの土地をどのようにして借りたらいいんだろう。」という初歩中の初歩の問題が目の前に。そんな時、お世話になっていた農園のおじーやそのお孫さんが「うちの土地を半分分けてあげるよ」と言ってくださって。そこからはとにかく沢山の人にお世話になりながら、流れに身を任せてここまで辿り着くことができました。

 

トラクターの乗り方も、土の耕し方もわからない、本当に非常識かつ無謀な挑戦をしている私は、農家の皆さんから「農業なめてるのか」と思われても仕方なかったと思うんですが、沢山の方がサポートしてくださって、また自分自身もそれに甘えっぱなしで申し訳ない気持ちでした。もうこれは、やり遂げて恩返しするしかないな、と。

 

まだまだ出来立ての赤ちゃんパイン。

 

農業には、「癒し」と「厳しさ」の両方がある。

−−−いざ農業を始めてみて、いかがですか?

 

「癒し」がすごいです。大自然のなか土を触ることで、マッサージとはまた違った癒しが得られるなと思います。与那国島のホースセラピー(乗馬療法)みたいに、畑セラピーも出来ちゃうんじゃないかな。体力的に大変なことだらけですが、なぜか自分にはすごく合ってるなと感じています。パインもひとつひとつが本当に可愛くて、我が子のような気持ちになります。

 

現在、就農して3年目。パインは2年で収穫できるので、去年初収穫がありそろそろ2度目の収穫を迎えるのですが、大変なことのひとつが鳥獣害対策ですね。農業を始めてすぐにイノシシに芯植えした苗を全部引っこ抜かれて、電気柵の重要性を知りました。また、実がなってからはカラスが大敵になります。山の中腹に畑があるので周囲はカラスの住処だらけなんです。一番悔しい思いをしているのはネズミ。網かけをしてもちょっとした隙間から入ってくるんです。先日も、被害にあった苗を苦しい思いをしながら50個ほど捨てました。あえて食べられてるのをそのままにする方法もあるのですが、早く次の子どもを育てようと思って。

 

もうひとつ大変な思いをしているのが「畑の傾斜」です。

 

パインは畑の水はけのよさが大切であるため、傾斜に植え付けをします。今お借りしている土地はすごく傾斜が強くて、大雨が降った時に川ができてしまって全て流れてしまったことがあるんです。その時に、土地の使い方や路地の作り方をちゃんと学ばないといけないよとおじーに教えてもらいました。ただ、雨の降り方ってその年によって変わるので、毎年…いや毎日勉強ですね。毎日何かしらの宿題が与えられて、答えが出るのがパインの収穫と同じで2年くらいかかります(笑)。

 

 

−−−普段どんな1日を過ごしているのかを教えてください。

 

今は自分の畑を見ながら、お世話になっている農園主の畑もお手伝いしています。自分自身のパインはまだゆらてぃく市場にしか卸していませんが、農園主のパインは島外発送もあるのでそういった梱包作業なども手伝っています。研修があったり、天候が悪かったりしても、必ず畑には足を運んで「おはよう」ってパインに挨拶するようにしています。冬の方が少し落ち着くので長く畑に居ることができます。

 

【忙しい真夏のある日の流れ】

6:00  畑到着 農具の準備

6:30  明るくなったら作業開始

12:00  昼休み

13:00  事務所にて発送の準備(同時にマンゴーの収穫も手伝う)

17:00  集荷に合わせて発送作業

20:00  ゆらてぃく市場に卸す分の準備(ひとつひとつ重さを測って金額を決めます)

→翌日あさ8:30までに納品

 

我が子のようなパインたち。出荷の時は「いってらっしゃい」と見送る気分だそう。

 

いろんな人にとっての「美味しい」のために。

−−−mammy farmのパインのこだわりポイントを教えてください。

 

パインは気温や日照時間の関係で冬の時期は味がのらないと言われています。しかし、私はあえて冬の収穫を狙って植え付けをしています。冬に収穫なんてありえない!と言われる時もありますが、それにはちゃんと自分なりの思惑があって。みんなが作っていないこの時期、推奨されていないこの時期の生育データがほしいんです。

 

パインにも様々な品種があり、甘みと酸味のバランスも様々。中には味がとっても濃いものもあります。冬の安定収穫のノウハウがついたら、例えば味が濃い品種を味がのらない冬収穫に合わせて栽培することで、食べやすい甘さのパインが出来るかもしれない。そうやって、品種と時期を調整できるようになれば、冬でも美味しいパインを食べてもらえるのかなと考えています。

 

美味しさの基準は人それぞれ。農協には基準値外で出荷できないような緑熟りょくじゅくパイン(まだ若いのに中身が熟しすぎたパイン)をゆらてぃく市場に卸すと、年配のかたや小さいお子さんのいるママさんからは大好評だったりします。基準値内の甘さをキープすることも必要だけど、甘さや味に振り幅をもっていた方が、いろんな方のニーズには答えられるのかなと思っています。

 

あとは、パインひとつひとつへの声かけや音楽を聴かせるという方法もこだわっています!

 

大自然の中で育ったジューシーなパイン。(写真提供:杉原さん)

 

−−−今後のビジョンについて教えてください。

まずは、自分が「この味だ!」と納得のいく味のパインを安定して収穫できるようにすること。また、いつかはこのパインの栽培を体験コンテンツとして多くの方に味わってもらうことも出来たらいいなと考えています。パインはかなりメジャーになってきたフルーツですが、どのように育って収穫されるかを知らない人もまだまだ沢山います。実際に、私も初めは海に生えてるアダンとパインを勘違いしている時もありました(笑)。(アダンとは、沖縄ではマングローブや海岸沿いでよく見られる植物。夏になると甘い香りを放つ橙色の果実をつける。ヤシガニの大好物。)

 

そういった方々に、石垣島での体験のひとつにパインの植え付けや、収穫をイベント的に体験してもらうことで、私が感じたような「土いじりの楽しさ」を味わってもらったり、大自然に癒されることで、都会に帰った時にもっと楽しい人生を送るためのエネルギー補給をしてもらったり、その体験が石垣島にまた帰ってくる理由になったらいいなと思うんです。 美味しいパインを育てつつ、もっと色々な形で癒しの場を提供できたらいいなと、まだまだ駆け出しですが考えています。

 

 

−−−最後にこの記事の読者の方へ、メッセージをよろしくお願いします!

 

みんなが心豊かになれる人生を送れるきっかけに、この畑がいつかなればいいなと思います。あとは、住まわせてもらってるこの島の皆さんへ何か恩返しできるように、パインを通して人や地域と繋がっていきたいです!

 

お野菜や果物を食べるときに、どんな人がどんな場所でどんな風に作っているかを知ると、もっと美味しく楽しく安心してお野菜や果物を味わえると思います。なので、もし私のパインを食べてみたいなと思ってくださった方、食べたことがある方がいれば、どんな人が作っているのかを知ってもらいたいです。ぜひ気軽にお声がけください。

 

杉原 真実さん、ありがとうございました!

聞き手・写真 岩倉 千花 / 協力 石垣市農林水産部 農政経済課

 

 

この記事を書いた人
岩倉 千花 ( Iwakura Chika )
石垣市川平村出身。立命館アジア太平洋大学を卒業後、芸能プロダクションと地域コンサルタントの会社で経験を積んだ後に2017年8月より石垣島に拠点を移す。島内のイベント運営やカメラマン、ライターとして活動中。1991年6月生まれ。
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