【しまたべ】若手農家インタビューvol.3 東内原航太さん

雨の日も風の日も、たとえ台風の日だったとしても畑に通い、

汗水流しながら作物に愛情を注ぎ続ける。

そんな農家さんがこの島には沢山います。

今回はそんな中から4名の若手農家さんにお話を聞きました。

 

しまたべ(島×食×部)とは・・・お野菜、果物、お肉、お魚・・・私たちの食卓に並ぶ島の味。それらをつくる“人”を知るだけで「食べる」がさらに楽しくなる。しまたべは、そんな美味しいの裏側にいる“人”を知るきっかけを、あなたにお届けするプロジェクトです。

 


vol.3 東内原 航太ひがしうちはら こうたさん(あらすぱれ農園)

・1989年9月11日

・石垣市白保生まれ

・農家歴:6年

・生産作物:ゴーヤー・オクラ

 

農業の道を決めたきっかけは「高校進学」


石垣市白保村に生まれ育ち、Uターン後もその地で農業をする生粋の白保っ子。

 

−−−農業をはじめたきっかけと現在に至るまでのことを教えてください。

 

きっかけと言われると「商工(八重山商工高校)に行けなかったから」ですかね(笑)。

 

高校受験の時、商工と農高(八重山農林高校)で進路を迷っていたんだけど、当時の自分の学力だと商工に行けないと分かった時に「(農高に進学するなら)自分は農業の道に進むんだな。」と直感したというか選択肢が絞られた感じがしたんです。もちろん「農高に進学=将来は絶対農業に関わる仕事をする」という決まりがあるわけではないんですが、僕の両親が農家ということもあってか、大人になった自分が農業の道を歩んでいる姿は、すんなりとイメージできました。

 

農高卒業後は南九州大学という農業大学へ進学。卒業後はすぐに就農するのではなく、まずはいろんな職種に就いてみようということで会社員になりましたが、今後について考え始めたタイミングでちょうど両親から新しくビニールハウス事業を導入するという話を聞きました。

 

会社員を経験してみて、「指示を受けての働き方」よりも「自発的な働き方」の方が自分に合っていると感じていた僕は、その新しく導入するビニールハウス事業を自分自身でやりたいと思い、すぐに帰ってきました。3年間ほど両親の農園で働き、3年前から自分の名前で独立しました。現在は、冬場はハウスでゴーヤー、夏場は路地でオクラを中心に生産しています。

 

 

野菜と農家の相性は大事。

 

−−−生産品目をゴーヤーとオクラに決めた理由はなぜですか?

 

ゴーヤーやオクラと僕の「性格が合った」からです。

 

僕は、野菜にも性格があると思っています。繊細な性格のお野菜は手入れがすごく必要だし、大雑把だったり自由な性格のお野菜は、そこまで手入れを細かくしなくても元気に育ってくれる。

 

どんな仕事でも、そのパートナーと性格が合う・合わないによってパフォーマンス力が変化することってありますよね。農業もそれと一緒で、育てる野菜と農家の性格がいかに相性良いかって大事だと思うんです。僕は、唯一やってみて性格が合わないなと感じたのはトマトでした。僕は割と雑な性格で、自由に実ってくれるゴーヤーやオクラが合っているんです。他の農家さんと比べるとハウスの中もごちゃごちゃしていると思うのですが、それでも僕のゴーヤーやオクラは元気に育ってくれています。

 

 

−−−農業に関しての知識はどういったツールから得ていますか?

 

一番は「人」と「自然」かな。農業の専門書はあまり読みません。両親や畑に遊びにきた先輩農家さん、専門家の方たちが「こんな技術があるよ」と教えてくれるので、いいなと思った方法を取り入れさせてもらいます。あとは天気予報や自然の変化、生き物の動きなどをよく見て「なぜこうなったか」をしっかり考えるようにしています。

 

僕の場合は誰かに頼るというよりも周りに頼ってもらうことが多くて、僕自身が経験したことが無いことでも「これってどうしたらいい?」と聞かれることが多いんです。そういった時に、自分の経験や自然の流れと、周りの方々に教えてもらった知識を色々すり合わせながら対処法を提案してみると、意外と解決に繋がるんです。

 

本や資料から得る知識やノウハウもゼロではありませんが、そういったツールから得る情報のほとんどは経営に関しての情報ですね。自然に関してのことは、自然と向き合ったり変化を見る中でヒントをもらっています。

 

 

−−−航太さんは、なんでも笑顔で乗り越えてきている印象ですが、ずばり「これに悩まされてる!」っていうことはありますか?

 

やはり台風対策ですね。数日前から台風情報は出ていても、直前になって風向きや進路が変わったりします。対策して一安心というわけにはいかず、常に状況を見ながらの臨機応変な判断が必要になります。

 

対策としては、ビニールを取り外して上からネットを張るか、さらに強い風が予想される場合はゴーヤーを吊るしているワイヤーを地面まで下ろすか(ゴーヤーはつる植物のため、ワイヤーに這わせて高さを出すことで実がぶらさがるようになっています。)もしくは早めに収穫するかが主となります。

 

あまり風も強くならないだろうとビニールを取り外し、ネットでの対策をしたのに、実際はすごく強い風が吹いて、ワイヤーごとゴーヤーが飛んでいってしまったり、暴風を予想し早めに収穫したのに風向きで全然被害が無かったりと、想定が外れてしまうことも多々あります。

 

台風との戦いは、石垣島で農業をする上での宿命ですね。

 

 

−−−忙しい日の1日の流れを教えてください。

 

1年の流れとしては、1月から6月はゴーヤー、4月から12月はオクラが収穫の時期。特に忙しいのは、オクラの繁忙期ですね。

 

【忙しい日の流れ】

7:00  オクラの出荷場を開ける

8:00  畑に移動しオクラの収穫

13:00 収穫したオクラの選別作業

14:30 配達(道中でお昼ご飯をつまむ)

16:00 作業場に戻って選別や発送準備

23:45 終了

※白保地域はオクラ農家が多いため、他の地域の集荷場と別で、白保近隣の農家が収穫したオクラを持ってくる集荷場があります。

 

ジョークも交えながらニコニコお話ししてくれる航太さんも、お野菜のことを語る時は真剣です。

 

オクラの収穫が落ち着く時期は、朝早くから集荷場を開けるという作業がないのですごくゆっくり。朝は8時ぐらいに起きて、のんびり畑に向かって、お昼ご飯もお店に入って食べたいものをゆっくり食べます。昼寝の時間もとる。大好きなお酒も気兼ねなく飲めます。

 

こうしてワークライフバランスを自分自身で調整できるのは、農業のいいところだと思っています。

 

 

「いらないもの」に価値を与えていきたい

熟したゴーヤーの種はこんなに真っ赤になる。

 

–––白保出身の航太さんが白保で農業をしていることは、地域の方からも喜ばしいことでしょうね。

 

どんなかね(笑)。僕はオクラの集荷場の管理をJAから委託を受けてやっていて、そこには自分が生まれ育った地域の先輩方がオクラを持ってきます。その場ではいつも「俺がいないとオクラ売れないよ。感謝してよー。」と、冗談混じりに言うんだけど、地域の人たちのためだからこそ朝早く起きて集荷場に向かえるし、少しでも恩返しになったらいいなと思っています。

 

地域との関わりで言えば、ひとつ面白いことがあって。僕の野菜たちは基本的にJAを通して県内外とゆらてぃく市場に卸したり、青果店を通してスーパーやお弁当屋さんとかに直接卸しているんだけど、「意図せず直売」もしていて。

 

ある時から、近くに住む地域の方々が500円だけ持って畑に来ることが増えたんです。「はい。買いにきたよ。」ってね。畑の前を通ったら僕の軽トラが止まっていたから、野菜を買いにきてくれたそう。「ここ畑なんだけど・・・」と最初はびっくりしたけど、もう最近では、作業中に買いにきたら「収穫してとってって!」と言ったりする。面白いよね。こういった出来事は、地域の方が僕を農家として認めてくれていることが感じられて、すごく嬉しいです。

 

 

–––今後のビジョンについて教えてください。

 

いつかは、体験型のサービスのひとつとして「農業体験」というものに挑戦してみたいなと思っています。最近では、島を訪れる人の中には草取りすらしたことがないという人がいます。住んでる地域によって土や自然との距離感は様々ですから。そういった方々からすると、僕たちが日々行う農作業は、非日常体験となります。お店で調理されたり並んだりする美味しい島野菜を食べたり買ったりするのもいいけど、せっかく島を訪れてくれたのであれば、自らの手で収穫したり育つ過程を間近で見るのも楽しいと思うんです。農家の僕たちにとっても、ただ野菜を生産し続けるのではなく、その生産過程までもが価値として売り出せるということを実感できるような挑戦をしてみたいです。

 

あとはフードロスに向けての取り組みも面白そうだなと考えています。

 

傷ついてしまったものや規格外のものは、どうしても価値をつけられないのが現状。黄色くなったゴーヤーってみたことありますか?僕たちが出荷している緑色のゴーヤーは未完熟のもので、完熟したゴーヤーは黄色くなるんです。熟れたゴーヤーは出荷できないため、知り合いにあげるか廃棄に回ってしまいます。しかし、食べれないわけではないんです。熟れたゴーヤーのタネは真っ赤になって甘くなります。その部分は何かに活用できるんじゃないかな。昔の人は熟れたゴーヤーのタネをおやつにしていたと聞くし。

 

出荷できない規格外の野菜も、かけた手間暇や時間は他と変わらないので、「いらないもの」にするんじゃなくて違った形で価値化していきたいなと思います。

 

 

–––最後にこの記事の読者へ、メッセージをよろしくお願いします!

 

「全ては自分次第」これが農業の一番のやりがいだと思っています。時間の使い方も着る服も作業のペースも、儲けるかどうかも、自然との向き合い方も、全ては自分のトライ次第なんです。時にそれはすごく大変だし、責任も自分が被ることになるのでしんどくなる時もあります。それでも、やっぱり美味しいと言ってもらえるのは当たり前に嬉しいし、農業はまだまだこれからも可能性が無限大にあると思っています。

 

もし、これから農業を始めようかなとか思っている人がいたら、新規就農農家としての制度なども調べてみるといい。入ってくる情報が格段に増えます。農業をスタートする時の資金面などでのサポートもあるので挑戦しやすい。土地の見つけやすさなどにも関わってくるんじゃないかなと思います。もちろん、その分報告義務や視察受け入れなどちょっと緊張感のある業務も増えますがね。ぜひ、いろんな制度を見てみて人の話を聞いてみて挑戦してみてほしいです。

 

あらすぱれ農園のお野菜は、「安心安全の美味しさ」はもちろん、自分らしくのびのびと育った野菜ばかりです。ぜひ見かけたら、一度手に取ってもらえると嬉しいです。

 

東内原 航太さん、ありがとうございました!

聞き手・写真 岩倉 千花 / 協力 石垣市農林水産部 農政経済課

 

 

この記事を書いた人
岩倉 千花 ( Iwakura Chika )
石垣市川平村出身。立命館アジア太平洋大学を卒業後、芸能プロダクションと地域コンサルタントの会社で経験を積んだ後に2017年8月より石垣島に拠点を移す。島内のイベント運営やカメラマン、ライターとして活動中。1991年6月生まれ。
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